2010年9月30日木曜日

「あなたのお気に入りのうつわを見せてください。」その3


≪太田とみさんのお気に入り≫

今回は太田とみさんから教えていただいたお気に入りをご紹介します。

ご本人曰く、「この器は沖縄で買いました。なんとも握り心地が良く、飲み口もとても口当たりが良いのです。デザインも可愛いでしょ? 割らないように大切に使ってます。結構丈夫な所もお気に入り


なんだか強いお酒がくいくいと飲めそうなうつわですね。酒豪でいらっしゃるのでしょうか。

ところで私、このうつわもさることながら、写真に写っている後ろの方が気になります。やきものがずらり並んでいるのがぼんやり見えるのです。

太田とみさん、どんな方なんでしょう?

2010年9月25日土曜日

チラシ裏面の文章

展覧会のチラシがすこし出回るようになって、「見ましたよ!」「かわいいデザインですね!」とのうれしい声がちらほらと届くようになりました。

なかには「おいしそうですね」なんて感想もあり、展覧会のサブタイトル「いとおしいやきものたち」を「おいしいやきいもたち」と読み違えてしまった、なんて方もいらっしゃったり。

読み間違えはかくも創造的なり。

そして裏面には、展覧会チラシにはあるまじき長い文章が掲載されています。文章量だけを見ても分かっていただけるように、ここには企画者の想いがつまっています。

ですので、読みにくいかもしれませんが、このブログにも再録しておきます。




今から二百年以上も前につくられたという巨大な甕を指差しながら、小石原の陶工が言いました。「これね、形はいびつだしすこし割れてもいるんですよ。その意味ではいわばB級品です。だからこそ今に残っている。私にはとてもいとおしく思えるんですよ」
 
陶工のこの言葉から、やきものの「いとおしさ」をめぐる旅が始まりました。

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 飛び鉋や刷毛目の模様で親しまれている小石原焼のうつわ。福岡に住む人ならどこかで見たり使ったりしたこともあるでしょう。福岡県朝倉郡の小石原に軒を並べる五十軒ほどの窯元が、十七世紀にまでさかのぼるという長い伝統を受け継ぎながら、暮らしに映えるうつわをつくり続けています。
 
そして小石原から山をひとつ越えたところでも、同じ技法を特徴とするやきものがつくられています。それが大分県日田市の小鹿田焼です。その歴史は十八世紀の初め、もともと小石原の陶工が招かれたところから始まります。ですから小石原焼とはいわば兄弟窯の関係。十軒の窯元は昔のままに共同でやきものづくりに勤しみ、集落全体がひとつの家族のようにして暮しを営んでいます。
 
このふたつの窯から生みだされるやきものは、ときとして見分けがつきません。しかし素材となる土は、はっきりと異なります。小石原焼では小石原で採れる土が、小鹿田焼では小鹿田で採れる土が用いられ、それぞれの土の性質に合った器形や技法、焼成温度が長い歴史のなかで試行錯誤されてきました。できあがったうつわに見た目の大きなちがいがないとしても、この土のちがいが両者の今を支える大切な拠り所となっているのです。

   ***

 冒頭の言葉を聞かせてくれた陶工は、続けてこんなふうに言いました。「きれいにできたやきものは人の暮らしのなかで使われて、割れて、大抵が消えて無くなってしまうものです。しかしそれが、私たちの理想とする仕事なのかもしれませんね」 

土から生まれたやきものが再び土に帰るということ。その循環を思い描きながら陶工は轆轤を回し、窯に向かうのだといいます。

生きとし生けるものは全て、生まれると同時にいつか死ぬことを運命づけられています。いずれ形を失うやきものもまた、限りあるがゆえの命を持ちえるのでしょう。ただしそれは陶工の手だけが与えるものではなく、陶工の手を離れる瞬間にも宿るもの。つくる人から使う人へと委ねられ、土の循環、時の流れへと放たれる瞬間から、やきものはその天分を生きはじめるのかもしれません。

土と交わる陶工の手は、自分の個性を発揮するための道具であると同時に、自分を超える遥かな流れ、長大な広がり――それを伝統や風土と呼んでもいいでしょう――と自分をつなげるための回路となりえます。その手から生まれたやきものが残らないとしても、その手から生みだされる仕事は子どもから孫へ、百年先二百年先へと伝えられるにちがいありません。

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小石原であれ小鹿田であれ、陶工たちは家族を支える生業として日々やきものづくりに勤しんでいます。そこでは同じ形のうつわを大量につくることも大切です。一見単調な作業に思えますが、じつはとても複雑で創造性に富む営為でもあります。同じに見えて天候やその時々でわずかに異なる土の声に耳を傾けながら、同じに見えて日々調子や気分の変わる身体を細やかに調整し、土と交わること。その一回ごと一日ごとの労働の積み重ねがゆたかな生活となり、未来の希望へとつながっていくのです。

花や樹や鳥をいとおしく慈しむのと同じように、やきものをいとおしむ。そんな感性を大切にすることで私たちは、幸せに生きて在るための、今とはちょっと違う方法も見つけられるのではないだろうかと、小石原と小鹿田への旅は考えさせてくれました。

竹口浩司(当館学芸員/展覧会企画者)

2010年9月19日日曜日

「あなたのお気に入りのうつわを見せてください。」その2


≪めぐみさんのお気に入りのうつわ≫

今回は、めぐみさんから寄せていただいたお気に入りのうつわ。ふたりでお酒を飲むカップだそうです。顔がいい。

お気に入りの理由は、こんなかんじ。「誕生日プレゼントに先輩に彼ができたらお酒をふたりで飲みなさいといわれて頂いたものです。彼と別れた年にもらったので今だにひとりで使っていてヒゲの生えたほうをつかってくれる人が現れるのを願ってつかってます。」

うれしいけど、切ない。

めぐみさん、わたしもいっしょに願いますね。

2010年9月10日金曜日

展覧会チラシ

展覧会チラシができあがりました。

これが、、、















こう広がって、、、















さらにこう広がる。















さらに、これを裏返すと、、、

こんなかんじ。















かわいい包装紙をイメージしています。

展覧会チラシって、展覧会が終わったら捨ててしまいがちですが、まるでお気に入りの包装紙を大事に取っておくように、展覧会が終わっても取っておいてもらえればうれしいなあ、と思います。写真はかなり色が悪いですから、ぜひ手に取ってみてくださいね。

ちなみにデザインはCalamari Inc.。

カラマリさんの提案でこんなステキなチラシができました。いまは、来場者に配布する解説リーフレットを制作中。こちらもちょっとした仕掛けあり。お楽しみに。

2010年9月9日木曜日

「あなたのお気に入りのうつわを見せてください。」

展覧会は展示室のなかでだけ行われるものではありません。あるいは、展覧会の期間中だけ行われるものでもありません。

このブログもそんなスタンスのひとつですが、さらにもうひとつをご紹介。

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特別企画「あなたのお気に入りのうつわを見せてください。」

毎朝コーヒーを飲むカップ、旅の思い出に買ったお皿、捨てられない子どもの頃のお茶碗など。陶磁器にかぎらず、ガラスでもプラスチックでも素材はなんでも構いません。あなたのお気に入りのうつわを写真に撮ってメールで美術館に送ってください。

展覧会場前に特別コーナーを設けて展示し、本展限定ブログでも紹介します。

【応募方法】デジタルカメラ(携帯電話のカメラでもOK ! )でお気に入りのうつわを撮影して、E-mailにて福岡県立美術館 学芸課(fpart-g@lime.ocn.ne.jp)にお送りください。サイズは最大2Mまで。応募の際には、1)お名前(ニックネームやイニシャルでもOK ! ) 2)うつわの名称や説明 3)お気に入りの理由や思い出 をお知らせください。

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すでに何枚か写真が届いておりますので、そのうちの1枚をご紹介しましょう。


≪米倉竜英さんのお気に入り≫

「家族と近所の方がいっしょに作ったうつわのひとつ。落としても割れない分厚さが気に入っています。」



理由がなんとも秀逸ですね。

みなさんからのご応募もお待ちしております!

2010年9月8日水曜日

はじまります

こんにちは。福岡県立美術館 ウェブ担当者です。

いよいよオープン1か月前となりました、「郷土の美術をみる・しる・まなぶ vol2.  小石原焼と小鹿田焼  いとおしいやきものたち」(通称「やきもの展」)。このブログは、「やきもの展」のさまざまな情報をライヴに、細やかにお伝えするために期間限定で始まります。

こまめなアップを心がけますので、展覧会に来る前にも来た後にも、あるいは残念ながら展覧会には来れない方も、みなさんお楽しみください。

ちなみに更新状況はツイッターでもお知らせしますので、こちらもフォローお願いします。

http://twitter.com/fukuoka_kenbi

なお、福岡県立美術館のホームページでは、同時期開催の「ミッフィー誕生55周年 ゴーゴー・ミッフィー展」の情報なども掲載していますので、こちらもあわせてご覧ください。

http://fpmahs1.fpart-unet.ocn.ne.jp/


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郷土の美術をみる・しる・まなぶ vol.2
小石原焼と小鹿田焼  いとおしいやきものたち

【会場】福岡県立美術館 4階展示室

【会期】2010109日(土)〜1128日(日)

【休館日】月曜日(ただし10/11は祝日のため開館、10/12が休館)

【観覧時間】 午前10時〜午後6時(入場は午後530分まで)

【観覧料】一般300円(200円) 高大生140円(100円) 小中生60円(50円)  

*( )内は20名以上の団体料金  *65歳以上の方は一般団体料金  *次の方々は無料=身体障害者手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている方およびその介護者、教員引率による児童・生徒およびその教員、土曜日の高校生以下の方


この展覧会では、江戸時代後期から現代にいたる小石原焼(こいしわらやき:福岡)と小鹿田焼(おんたやき:大分)のやきものを80点ほど展示します。福岡および九州のローカルな美術をたのしく深く紹介する「郷土の美術をみる・しる・まなぶ」シリーズの第2回展。大人と子どもがときには一緒にときには別々に楽しめる展覧会を目指します。

会場には分かりやすく工夫された解説やクイズなどがあり、おもてなしスタッフ「ハンズさん」がみなさんを気さくにお出迎えいたします。ユニークな関連イベントもあります。みなさんなりの展覧会の楽しみ方を探し、みなさんのいとおしさで会場を充たしてください。

日々使っているうつわが本展をきっかけにいっそういとおしく感じられるようになれば、とてもうれしく思います。