2010年10月21日木曜日

西日本新聞に紹介記事が掲載

10月21日の西日本新聞(朝刊)に本展の紹介記事を掲載していただきました。担当学芸員の竹口が執筆しております。

新聞紙上でご覧いただいた方もいらっしゃるかと思いますが、まだご覧になっていない方のために、ブログにアップしました。

会場の様子はもちろんのこと、担当学芸員の顔もあわせてお楽しみください。笑



【テキスト全文】

展覧会の開催を目前に控え、チラシが皆さんの手元にようやく届きだした頃、私のもとにはさまざまな感想が届きました。「お菓子の包み紙のようでかわいいですね」「秋らしく、落ち着いた色がステキですね」という多数派から、「インクの匂いがいいですね」「『いとおしいやきものたち』を『おいしいやきいもたち』と読んじゃいました」という少数派まで、ともかくリアクションは絶大でした。
109日から開催している「小石原焼と小鹿田焼 いとおしいやきものたち」。この展覧会のためのチラシ、会場配布リーフレットはともに博多区須崎町に事務所を構えるCalamari Inc.がデザインしてくれました。小石原と小鹿田への調査にも同行した彼らが最初に出した案は「包装紙のようなチラシを」「コースターのようなリーフレットを」というものでした。私はその提案をとても面白いと即座に賛同し、印刷物が出来上がるにいたったのです。

福岡にお住まいの方なら小石原焼にはなじみが深いかもしれません。朝倉郡東峰村の小石原に50軒程の窯が集まり、17世紀からの伝統を受けつぎながら現代の暮らしに映える器をつくっています。一方小鹿田焼は、全国的な知名度はとても高いのですが、福岡では案外知られていないようです。しかし、じつは小石原焼とは兄弟窯。大分県日田市小鹿田の集落からすこし離れた山間の里に10軒の窯がぎゅっと寄りあい、まるで家族のように共同でやきものづくりを営んでいます。ともに素朴でありながら力強く、愛嬌のあるその姿は、暮らしのなかで使いたくなるいとおしいやきものたちです。
調査を重ねていくなかで印象的な陶工の言葉に出会いました。「きれいにできたやきものは人の暮らしのなかで使われて、割れて、大抵が消えて無くなってしまうものです。しかしそれが私たちの理想とする仕事なのかもしれませんね」 この言葉をいっしょに耳にしたかどうかの記憶はあやふやなのですが、デザイナーもまた暮らしのなかでの用途にこだわりました。

チラシの用途は第一に展覧会の広報ですから、当の展覧会を見終わればもう手元に残しておく必要もありません。しかし、さらに「包装紙」という別の用途を与えることで、それぞれの暮らしのなかで使われたり大事に保存しておかれたりしつつ、いつかその天分を全うすることもありえるでしょう。
デザイナー曰く「わざわざ捨てられるようなものは、もうつくりたくないんです」。いずれ消えて無くなるにしても、いとおしく慈しまれた果てを目指す――これは先の陶工の言葉と同じ方向を見つめているし、「民陶」というものの遺伝子を彼らなりに受け止め、伝えてくれているような気がしています。(福岡県立美術館学芸員 竹口浩司)